海外市場にも,アメリカ,ヨーロッパ,アジアなどいろいろとあるため,どこで使う資金か,金利はどうか,為替相場はどうなっているか,発行に対する規制や手数料はどうかなどを考慮して,資金の調達先を決めることになる。 金利や為替相場の変動に対しては,スワップや為替予約などのデリバテイブ取引を組み合わせることによってリスクヘッジを行うことが多い。
日本企業の海外現地法人が,その出先国で証券を発行する場合は,すべてその出先国の法律によって規制される。 これに対して,日本の内国法人が,外国市場で証券を発行する場合は,発行のための会社内部の手続は,日本の商法に従って行われるが(株券の発行については商280条の2以下,社債の発行については商296条以下),証券の募集,売出は,それが行われる外国の法律に従って行われることになる。
なお,有価証券報告書を提出している会社が,本邦以外の地域において総額1億円以上の株券や新株予約権付社債などの募集・売出を開始した場合は,臨時報告書を提出しなければならない(証取24条の5第4項,開示府令19条1項・2項1号・2号)。 日本の内国法人が,外国市場で証券を発行する場合は,居住者による外国における証券の発行もしくは募集となるため,外国為替及び外国貿易法が定める資本取引に該当し(外為20条6号),当該資本取引の内容,実行の時期などを,証券の発行・募集の日から20日以内に日本銀行を経由して財務大臣に報告しなければならない(外為55条の3第1項7号,外為令18条の5第2項,外為報告省令11条1項)。
居住者が国内で外貨建ての証券を発行する場合も資本取引とされているため(外為20条6号),同様の報告義務が発生する。 ただし,発行・募集の金額が10億円に相当する額未満の場合は報告は不要とされている(外為令18条の5第1項1号,外為報告省令5条1項2号)。
なお,当該資本取引が何らの制限なしに行われた場合には,本邦と外国との間の大量の資金の移動によりわが国の金融市場又は資本市場に悪影響を及ぼすことになるなどのときは,財務大臣は当該資本取引を行うことについて許可を受ける義務を課することができる(外為21条2項3号,外為令11条1項,外為省令11条)。 外為法での「居住者」とは,本邦内に住所または居所を有する自然人および本邦内に主たる事務所を有する法人をいう(外為6条1項5号)。
非居住者の本邦内の支店,出張所その他の事務所は,法律上代理権があると否とにかかわらず,その主たる事務所が外国にある場合においても居住者とみなされる(同号)。 「非居住者」とは,居住者以外の自然人および法人をいう(同項6号)。
ところで,非居住者である個人,または,外国会社が,日本の上場会社の株式を10%以上取得することなどは,対内直接投資等とされ(外為26条1項.2項3号,対内直接投資等に関する政令2条5項),当該対内直接投資等の内容,実行の時期などを,当該対内直接投資等を行った日から起算して15日以内に財務大臣及び事業所管大臣に報告しなければならない(外為55条の5第1項,対内直接投資令6条の3第1項)。 対内直接投資等のうち,わが国経済の円滑な運営に著しい悪影響を及ぼすことになるなどの一定のものについては,当該対内直接投資等を行おうとする日の30日前までに,財務大臣および事業所管大臣に届出をしなければならない(外為27条第1項〜3項,対内直接投資令3条2項)。
届出を受けた財務大臣および事業所管大臣は,必要があれば,当該対内直接投資等を4または5ヵ月間禁止して審査を行い,当該対内直接投資等の変更・中止を勧告し,届出者がこれに応じない場合は,変更・中止を命令することができる(外為27条5項〜12項)。 事業所管大臣とは,対内直接投資等に係る事業の所管大臣とされている(外為69条の3,対内直接投資令7条)。
外国企業が日本国内で証券を発行したり,売り出す場合は,会社内部での発行手続は,その外国企業の本国法に従って行われるが,日本国内での「募集」・「売出し」については,日本の証券取引法に従って行わなければならない。 日本の証券取引法は,外国または外国法人が発行する証券も,同法の適用対象となる有価証券として定義しているため(証取2条1項7号・7号の2.9号〜11号,証取令1条,証取2条2項2号),これらの定義に該当する証券を,日本国内で募集または売り出す場合は,日本の会社が日本国内で行う証券の募集・売出と同様の規制が行われることになる。

なお,日本の国債と地方債は,開示規制を免除されているが,外国の国債や地方債は,開示規制を免除されていないため,株券や社債券と同様の開示手続を踏まないと募集・売出ができない(証取3条)。 外国法人が発行する株券や社債券などに対する流通市場開示規制については,内国法人が発行する株券や社債券などと同様の規制が行われているが,有価証券報告書の提出期限が,内国会社の場合は,事業年度経過後3ヵ月以内であるのに対して,外国会社の場合は,原則6ヵ月以内とされており,金融庁長官の承認を得た場合にはさらに延長が認められているなど(証取24条1項,証取令3条の5,開示府令15条の2),若干の違いがある。
外国法人が発行する株券や社債券などに適用される開示規制関係の命令についても,内国法人が発行する株券や社債券などと同様であり,「企業内容等の開示に関する内閣府令」が適用される(開示府令1条1号二による開示府令での有価証券の定義を参照)。 ただし,外国会社が「適格機関投資家向け勧誘」により証券を発行する場合や,証券の「募集」・「売出し」をする場合には,日本国内に住所を有する代理人を定めなければならないとされている(開示府令2条の2.7条など)など,若干の特別規定が置かれている。
開示書類も,内国会社と外国会社とでは,別様式のものが用意されており(開示府令8条1項・15条など),開示内容が若干異なる。 外国会社の場合は,企業情報として,本国における法制等の概要(会社制度や外国為替管理制度など),外国為替相場の推移などの記載が要求されている(開示府令7号様式(有価証券届出書),8号様式(有価証券報告書)など)。
投資信託証券や住宅ローン債権信託受益権などのいわゆる資産金融型証券についての開示規制を定める「特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令」も,特定有価証券が,国内法に基づくものか外国法に基づくものかにかかわらず適用されるが,「外国特定有価証券」(外国投資信託証券,外国資産流動化証券など。 特定証券開示府令1条7号)については,若干の特別規定を置くとともに(特定証券開示府令3条・9条(代理人),12条(添付書類)など),内国特定有価証券と外国特定有価証券とで,別様式の開示書類を用意している(特定証券開示府令5条(有価証券通知書),10条(有価証券届出書),22条(有価証券報告書))。
開示書類に含まれる貸借対照表や損益計算書などの財務書類については,金融庁長官が公益または投資者保護に欠けることがないものとして認める場合には,外国における用語・様式・作成方法による財務書類を提出することができる(証取193条,財務諸表規則127条)。

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